【茨木市】テストがない?!追手門学院高校「創造コース」の卒業プロジェクトを見に行ってみた

茨木市の追手門学院高等学校に、ユニークなコースがあります。
《学力を定期考査ではなく探究で測る》 創造コース です。
プロジェクト型の授業をメインに据える全国でもめずらしい探究先進校ですが、国内外の大学への実績もあり、しっかりと結果につながる教育を実施しています。
先日、その2期生34名が3年間の集大成を発表するという「卒業プロジェクト」にご招待いただき、取材に行ってきました。
「テストがないって、本当?」——やりたいことを追求する高校生活

追手門学院中学校・高等学校の校舎1階でおこなわれました
「定期考査がない高校」と聞いて、最初は驚きました。
生徒たちは定期考査の代わりにプレゼンをして、自分の学びを表現します。
創造コースの担当教員に話を聞くと、「点数によるレッテリングの弊害をなくしたい」という思いが根底にあるそうです。
「100点と70点では、どちらが優れているのか。でも本当は、学び方は人それぞれ。知識の量だけが『できる』ではないんです」
代わりに重視されるのは、思考力、表現力、伝達力、そして「こだわり」を持つこと。
つまり「何を知っているか」より「何をしたいのか、どう考えるのか」が大切にされるコースなのです。
授業がすべて特殊なわけではなく、一般教養授業もちゃんと行われています。ただ、評価軸が違う。
生徒たちは3年かけて、自分で問いを立てて、課題を見つけて、その答えを探し続ける。その試行錯誤の中で、実は一番大事な「学ぶ力」が育まれていくと言います。
「アートって何?」「デザインって何?」——高校生が自分に問う

創造コースの卒業プロジェクトのテーマは「アート」と「デザイン」です。生徒たちが、この2つについて「自分なりの定義」を考えて、発表します。
ここで素敵だなと思ったのは、「今の自分の答えでいい」というスタンス。「定義は人生の中で変わっていくもの。年を重ねるごとに深めていけばいい」という考え方です。
完璧な答えを求めるんじゃなくて、「今、自分はこう考える」をしっかり表現することに意味があると言います。
発表の方法は、論文、プロダクト作品、音楽、ダンス、演劇など自由。
実際に見て、その表現のバリエーションの多さにも驚きました!

ホールでは、ダンス、弾き語り、ファッションショー、ヴァイオリン×お経、バンド演奏が!

作品とともに、それぞれの定義が紹介されています



ピアノ演奏という形で表現されたアート

会場を回っていると3年生が話しかけてくれて、作品や創造コースについて色々と教えてくれました。
山本彩夏さんは2つのプロジェクトに取り組んでみて、「自分はロジカルに考えることが好き」という自分自身の適性に気づいたそう。
「創造コースの魅力は、多様な意見をすべて受け入れてくれるところ。違う意見が出ても『とりあえずやってみようか』と言ってくれるので、やってもいいんだという安心感がある。何に対しても疑問を持つことが楽しい」
活き活きとした表情から、学校生活の充実ぶりがうかがえます。

作品について、そして学校について丁寧に教えてくれた山本さん。ありがとうございました!
また、QRコード付きの数学の教科書をデザインした堀之内慧さんは、
「新しいことに挑戦できるのが、創造コースのいいところ。そして、子どもの『やりたい』に対して、大人が本気でサポートしてくれるのも魅力です」
と教えてくれました。

「将来教え子に、自分は高校生のときにこんな風に学んでいたと伝えたくて作った」という作品
堀之内さんは、オープンスクールで先輩たちの授業を見て「おもしろそう」と思ったことが創造コース志願のきっかけだったそう。2年生のときに「先生になりたい」と思い、進学先を決めるなど、このコースが人生の選択肢を広げる場になっています。


授業用のスライド展示
違う背景を持つ同級生との出会いが、自分を強くする

どのブースも賑やかで、とても雰囲気の良い校内
創造コースの生徒から話を聞いていると、何度も耳にしたのが「多様性」という言葉でした。
水球部のパンフレット制作を通じてデザインを実践した澤田真さんは、
「生い立ちも性格も違うたくさんの人が集まっていて、いろんな知識や刺激をもらえる」
と言います。
澤田さんは「デザインは双方向のコミュニケーション、アートは一方通行のコミュニケーション」という定義を作り、プロジェクトに取り組みました。


「同じコミュニティでばかり関係を作り、筋肉で壁を作っている」と言われたことから、その壁を壊したくて作ったというアート
実際に卒業プロジェクトの現場にいて感じたのは、生徒たちの「考えの明確さ」と「それを伝える力」の強さです。
「なぜそんなに自分の意見をはっきり言えるんですか?」と聞くと、生徒たちは口をそろえて「プレゼンする機会が、ほんとに多いから」と答えてくれました。

点数という記号で評価されることなく、何度も何度も自分の考えを表現する。多様なバックグラウンドを持つ同級生から刺激を受ける。その繰り返しの中で、生徒たちは知識だけじゃない「生きる力」を身につけていくんだと感じました。
とにかくこの場にいるだけで、気持ちが前向きになり、生徒たちから刺激をもらいました。
自分が高校生のとき、こんな教育を受けていたら…と想像せずにはいられません!
新しい教育のアプローチに取り組む追手門学院高等学校。そして、2022年に新設されたばかりの創造コースのこれからに注目です。
もっと知りたいと思った方は、ぜひホームページへ!
追手門学院高校 創造コースの皆さま、ありがとうございました!






